「会社辞めたい」と新卒者が考える主な理由|転職時の判断基準も解説
かつての日本では、よく「石の上にも三年」と言われ、新卒者が早期に退職するのは将来のキャリア構築にとってマイナスに働くという考え方が大半でした。
しかし、終身雇用制が崩れ始める中、同じ会社で働き続けるリスクもささやかれるようになり、新卒者にとっては“転職を検討することが自分にとって正しいこと”なのか、決断しにくい時代を迎えたといえるかもしれません。
そこで、この記事では、会社を辞めたいと思い始めた新卒者に共通する主な理由や、自分が退職すべきかどうか迷ったときに使える判断基準について解説します。
高卒・大卒の新卒入社者は、4年未満で30%以上が辞めている
厚生労働省が公表している新規学卒者の離職状況を見ると、令和2年3月に卒業した新規学卒就業者の就職後3年以内離職率は、次のようになっています。
●中学:52.9%
●高校:37.0%
●短大等:42.6%
●大学:32.3%
結果を見る限り、高卒・大卒の新卒者は、4年未満で30%以上が職場を離れていることになります。
しかし、事業所規模別に就職後3年以内の離職率を見ると、以下の通り規模が大きいほど離職率は低くなる傾向にあります。
事業所の規模 | 高校(%) | 大学(%) |
---|---|---|
5人未満 | 60.7 | 54.1 |
5~29人 | 51.3 | 49.6 |
30~99人 | 43.6 | 40.6 |
100~499人 | 36.7 | 32.9 |
500~999人 | 31.8 | 30.7 |
1,000人以上 | 26.6 | 26.1 |
※参照元:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
事業所の規模が大きい場合、総じて離職率は低くなっていますが、100人を切ったあたりから離職率が40%以上に上昇しています。
このほか、職種によっても離職率には差が見られ、特に離職率の高い業種は以下があげられます。
- ●宿泊業、飲食サービス業(高卒62.6%/大卒51.4%)
- ●生活関連サービス業、娯楽業(高卒57.0%/大卒48.0%)
- ●小売業(高卒48.3%/大卒38.5%)
- ●教育、学習支援業(高卒48.1%/大卒46.0%)
- ●医療、福祉(高卒46.4%/大卒38.8%)
- ※参照元:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
これらのデータを紐解く限り、もはや新卒者だけに離職の理由を問うのはナンセンスであり、新卒者がすぐに仕事を辞めるのが甘えとは言い切れない部分があります。
なぜ「事業所の規模が小さい」と離職率が上がるのか
前述したように、事業所の規模が小さいことと、高卒・大卒の新卒者の高離職率には一定の相関関係がありそうです。
ただし、小規模事業所はその数が圧倒的に多く企業によってさまざまで、すべてに当てはまることではありません。そのことを前提に、どんな原因がありそうかみていきましょう。
賃金・福利厚生の面で不満がある
応募時や面接時に、賃金・福利厚生について一時は納得していても、働き続ける中で「本当に自分はこの給与・待遇で十分といえるのだろうか」と不満を感じている方は、意外と多いのではないでしょうか。
特に、入社前に説明を受けていた内容以上の業務量だと、残業時間が増えたり思っていたような評価につながらなかったりするおそれがあり、話が違うと感じた新卒者が職場を離れる状況は容易に想像できます。
そして、働くスタッフの数が限られている小規模な事業所では、手が足らず新卒者の負担が増えるおそれもあります。
人間関係の改善が難しい
どの職場においても、人間関係に悩む社員フは一定数存在しており、それを理由に離職する人も多く見られます。
新入社員に焦点を当ててみると、教育担当となるスタッフ・直属の上司との関係構築がうまくできず、離職してしまうケースが考えられます。
大人数が働いている事業所であれば、自分に共感してくれる人を見つけられる可能性もありますが、少人数の事業所において多数派・古参社員が自分と異なる考えを持っていると、その状況を単独で改善するのはなかなか難しいでしょう。
キャリアアップが見込めない
採用人数や部署の数に限りがある小規模の事業所では、社員すべての要望に沿う仕事を用意できない場合があります。
例えば、企画職として働くことを希望していたとしても、就職先では企画担当を一人しか置かない場合などはそのポジションに就いてキャリアを積むのはなかなか難しいものです。
そこで、少しでも自分の理想のキャリアを目指すため、チャンスの多い企業を探そうと考えると、やはり規模が大きい企業への転職を目指すことになりかねません。
離職率の高い産業に見られる問題点とは
離職率が特に高い業種にも、従業員が離れやすい構造的な問題があるものと考えられます。
もちろんこちらも、職場によって詳細は異なるものの、大きく分けて次のような原因があげられます。
ワークライフバランスの充実が難しい
離職率の高い業種に見られる特徴として、職場環境・働き方が従業員のワークライフバランスの充実にマッチしにくい点があげられます。
例えば、一般的には休みとされることが多い土日に休みにくかったり、深夜・早朝の勤務が求められたりすることがあります。
その結果、体調を崩したり、家族との関係が悪化したり、プライベートの時間が満足にとれなかったりすることをおそれて、離職してしまう人も一定数存在しています。
顧客対応が長時間労働につながる
顧客対応にかける時間や労力が大きいことも、離職率の高い産業に見られる特徴の一つです。
本来であれば終業時間のはずなのに、顧客対応が終わらないばかりに、残業時間が延びてしまうことも珍しくありません。
このような状況が続く業界は、どうしても人員が不足しがちであり、新卒者も離れやすくなります。
精神的負担が大きい
離職率が高い産業の中には、自分の感情をコントロールして良い印象を与え続けることが、自身の評価や報酬につながっているものもあります。
その分、精神的負担を抱えながら仕事をすることになるため、体調不良から職場を離れてしまうことも十分考えられます。
新卒者が会社を辞めるべきかどうかの判断基準
新卒者の立場で、現在働いている職場を離れようとする場合、本当に辞めても問題ないのか不安に感じてしまうかもしれません。
現在働いている職場を辞めようと思っているものの、本当に辞める以外の選択肢しか残されていないのかどうか検討したい場合は、次にあげる判断基準をもとに検討してみましょう。
職場で相談相手が見つかるか
退職を決断する際は、一人で悩まずできるだけ多くの人に相談することをおすすめします。
上司・先輩といった身近な人に相談できるなら、自分が辞めたいという気持ちは隠して、雑談の中で「この会社辞めたいと思ったことないんですか?」などと聞いてみるのがよいでしょう。
所属している職場は合わないが会社や商品・サービスは好きというケースでは、人事部に相談して異動を申し出るのも一手です。
不満を言語化する
一口に会社を辞めたいといっても、そこにどんな理由が隠れているのかは、自分の心の中を掘り下げて見なければ分かりません。
現状への漠然とした不安から転職を検討している場合は、自分が思っている「辞めたい理由」と「辞めなくてもいい理由」をノートなどに書き出し、まずは不満を言語化してみましょう。
言語化の結果、問題が現職で働き続ける中でも解決できそうな内容なら、いったん働き続けて様子を見るとよいでしょう。
転職の準備を進める
「辞めたい!」という気持ちだけが先行して退職してしまうと、その後は無職となり生活が成り立たなくなるおそれがあるため、転職活動はできるだけ「現在の職場で働いている間」に行いましょう。
実際に求人を探す前に、まず転職サービス・エージェントなどに登録しておくのも一つの手段です。
並行して、転職サイトをまめにチェックしたり、求人情報が配信されるメルマガ登録をするなど、多方面で情報収集をすることをおすすめします。
転職のメリット・デメリットを把握する
実際に転職活動を進める際は、一般的にいわれる「新卒者が転職することのメリット・デメリット」を把握しておくと、客観的な判断がしやすくなります。
具体的なメリット・デメリットには、次のようなものがあげられます。
メリット |
●長い人生の中で、将来につながる後悔のない決断ができる ●転職できる可能性が高い(市場価値が高い)うちにチャレンジできる ●第二新卒を募集している求人に応募でき、一般的な中途採用よりもキャリアアップのチャンスが得られる可能性が高い |
---|---|
デメリット |
●応募企業からのネガティブなイメージを払拭する必要がある ※(「すぐ辞めてしまう人材ではない」とアピールしなければ採用されにくい) ●実務経験やスキルも求められるため、能力次第ではすぐに希望の職場で働けないおそれがある |
転職活動がうまくいかない時期が続くと、自分が「世の中に必要とされていないのではないか」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
よって、メリットよりもデメリットの方が強く感じられる場合は、現在の職場にとどまった方が安心できるはずです。
逆に、今よりも転職後のメリットが大きそうだと思えた場合は、現職で働きながら転職活動をスタートさせてみましょう。
まとめ
新卒者の3割以上が約3年で退職する現代においては、新卒者が定年まで勤めあげる選択肢は、必ずしも主流とはいえません。
現在の職場で働き続けることに不安を感じたら、実際に退職するかはさておき、退職から転職までのシミュレーションを行っておくとよいでしょう。
求人サイトで求人情報を眺めたり、自分にとっての転職のメリット・デメリットをノートにまとめたりすると、自分の本当の希望が見えてきます。
退職や転職という選択肢を頭に入れておくだけでも、これまでの働き方を見直すきっかけになるはずです。
2024年10月8日公開