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【ピックアップ】静岡のお茶産業

史上初の産出額1位陥落を経験した静岡のお茶産業。そんな逆境の中、お茶の可能性を模索し未来を創造する企業・人の挑戦を紹介します。

先を見越す目線で国内外に新たな事業を展開。

先を見越す目線で
国内外に新たな事業を展開。

丸善製茶株式会社

静岡県静岡市駿河区丸子新田314

代表取締役古橋 克俊さん

静岡市出身。創業80余年の老舗茶商の丸善製茶㈱は、主に静岡産原料茶の卸売り他、各種包装茶の製造・販売、緑茶・ウーロン茶・紅茶などのティーバッグ製品の加工・製造を手掛ける。古橋氏は東日本大震災以降のお茶業界に危機感を抱き、新たな事業に挑み続け、国内外市場で「丸善」のブランド・イメージを高めている。

丸善製茶株式会社の
グッジョブポイント

世界を視野に、世界から見える日本茶ブランドの時流をつくる。

2014年の東日本大震災後の風評被害や、国内消費が落ち込んだことで海外販売の検討をするためタイへ渡り、ジェトロの輸出商談会に出席しました。情報を探りながら、国外マーケットで安易な価格競争に巻き込まれず、現地で生産・加工ができないものか、パートナー探しに農家さん一軒一軒へ交渉に回ってみたのですが、実を結べない日々を送っていました。

そんな中、お茶製造企業を探して最終的に行きついたところがシンハーコーポレーションでした。相手は大手、日本のお茶業界への危機感もあって、なんとかモノにしたくて、ホテルの一室を貸し切って役員相手に3時間のプレゼンテーション。結果、ご縁がつながりました。新会社「丸善フード(タイランド)」を設立し、日本製法のお茶をタイで生産しています。

タイでは日本食レストランが数千店鋪あり、日本の食文化も浸透していますが、輸入関税が90%と高いこともあって、日本茶は手に入りにくくなっています。東南アジアでは日本茶のブランド力をあげることが必要です。チェンライは観光農園もあってお茶イベントも盛大。一日に数万人規模の集客があります。これに参加するなど、日本茶ブランドのイメージをあげることで販売シェアを広げ、輸出もしやすくなるよう、努力を続けています。

世界の茶葉の集積地で探る、欧州市場への参入への道筋。

モロッコはお茶の生産地ではないですが、世界の茶葉の集積地。欧米をはじめ世界各国から訪れるバイヤーを相手に商いをするためには、日本茶のプラットフォームを作ることが必要だと思いました。現地取引先のSITIグループは包装資材のデザイン、製造、ティーバック加工、袋詰め、茶缶の製造、品質管理を全てグループ内で実施しています。ここに拠点をつくることで全世界に日本茶のPRと販売が可能になりました。

日本茶の生産量は世界で僅かに1.4%。コロナで苦労していますが、だからこそ、日本茶の消費を世界目線で増やしていきたいと考えています。世界的に日本茶の生産量は増えているので、売上は伸びるはず。中東でバイヤーに扱われている99.5%は中国茶。それに対し日本茶は0.5%。欧州市場で日本茶のシェアを広げるための販売努力はもちろん、日本茶のおいしさを知ってもらうセミナーなど、積極的にPRを続けています。

日本各地で若い人が楽しめる、日本茶カルチャーの創造。

2018年、静岡の街に、ただ飲むだけでなくお茶もティージェラートも店内で焙煎したものを楽しんでもらいたいと「マルゼンティーロースタリー」を開きました。デザイナーが考案した、お茶をドリップ式で淹れる方法やスタイリッシュな店鋪デザインを採用したのも、若い人にもっとお茶に興味を持っていただきたかったから。

マルゼンティーロースタリーで出しているお茶は一番茶だけです。静岡の銘茶を好みの焙煎温度で、味と香りの違いを楽しんでもらいたいと思っています。最高の茶葉の香り、旨み、色合いの奥深さに関心を持っていただくことが、この店の役割だと思っています。

静岡市の呉服町に出店したことが評判となって、県外で日本茶ミルクティーの専門店や店鋪のプロデュース、「八芳園」さんとのコラボなど、ここからの発信がきっかけとなって、新たな挑戦につながっています。

若者に希望を抱かせ、新しい時代に日本茶が向かう先。

日本全体の閉塞感は、特に海外に行くと感じます。茶業界の高齢化と農家減少は否めません。こうした危機感の中で、規定路線を進んで頑張っても収入が増えていかずに四苦八苦している若い人たちと一緒に、なんとか登りエスカレーターに乗りたい。お茶業界の見方そのものの角度を変えて、世界目線で日本茶を見てみることは求められると思います。

海外生産にチャンスはまだまだあります。モロッコでは地球にやさしい包装紙を使用したお茶、サウジアラビアでは高級感のあるデザインの王室向けのお茶が好評です。世界的にも環境や嗜好の変化に順応したブランド力のあるお茶をつくりだすことが、四苦八苦している日本の茶業界の活路になり得ると思っています。

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