
静岡市はプラモデルの出荷額で全国No.1を誇り、タミヤ、青島文化教材社、ハセガワ、バンダイなどの有名模型メーカーが集積することでも知られています。
全国シェアも82%とその圧倒的なシェアと長い歴史から、プラモデルの聖地として愛され続けています。
近年では「模型の世界首都・静岡」として国内外にその魅力を発信。その取り組みについて、静岡市産業振興課プラモデル振興係の石川係長にお話をうかがいました。
「静岡市プラモデル化計画」でプラモデルの魅力をまちの魅力へ
ものづくりが盛んな静岡市。中でも「静岡市」ときいて「プラモデル」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
そんな、地域資源である「プラモデル」への一層の愛着や誇りを醸成すべく、2020年2月に「静岡市プラモデル化計画」が始動しました。
ものづくりの楽しさ、すばらしさを内外に伝えるとともに、プラモデルを活用してまちを活性しようとさまざまな取り組みが行われています。
街中で目にする、ポストや公衆電話をモチーフにした「プラモニュメント」がその一つ。
実際に目にしたことがある方やニュースやSNS等で見たという方も多いのではないでしょうか。
2022年度からは「プラモデル振興係」が発足し、それまで以上に専門的・重点的に推進されています。
環境づくり・人財づくり・コンテンツづくりが取り組みの3本柱
静岡市プラモデル化計画は、環境づくり・人財づくり・コンテンツづくりを軸に、行政、企業、市民が一体となってさまざまな取り組みを構想、展開しています。
「環境づくり」の一つが組み立て前のプラモデルをイメージした「プラモニュメント」。(写真は、左上から徳川家康公甲冑プラモニュメント、金庫扉プラモニュメント<静清信用金庫>、郵便ポストプラモニュメント、公衆電話プラモニュメント<NTT西日本静岡支店>)
“まちの看板になるようなものでプラモデルそのものを感じてもらうことはできないか”と構想し、郵便ポストや公衆電話のプラモニュメントの設置に至りました。
等倍のスケールで見て楽しめるだけでなく、実際に手紙を投函できたり電話をかけたりすることができる斬新さが評判です。
実際に目にした方からは「さすがプラモデルのまちだね」などの声が多数届いたり、2022年度にはグッドデザイン賞をはじめとした3つの賞を受賞したりとその認知と評価が高まっています。
プラモデルに関わり、発信してくれる人を増やし育てていく
プラモデルのまちの一員として、静岡市のものづくりを担う人財、プラモデルの魅力をPRしてくれる人財、プラモデルを自身の活動に活かしてくれる人財の育成にも注力しています。
子ども(小学生)向けには、プラモデルづくり教室(写真)を実施。小さいころからものづくりに携わることでその興味を深め、将来ものづくり産業に従事してくれたら…という思いが込められています。
そういう意味で、「プラモデルはものづくりの第一歩として最適だと思う」とプラモデル振興係の石川さん。組み立てる前のワクワク感、作る楽しさ、完成したときの達成感。楽しさだけでなく、なぜうまくできないのかを試行錯誤する力も養えます。
今の小学生の半数はプラモデルに触れたことがないといいます。
ゲームや動画視聴が遊びの中心にある子どもたちにとってプラモデルづくりは新鮮で、ほぼ100%の子が「おもしろかった」「またやりたい」という感想を持つとのこと。
また、静岡市は教育現場全体で地場産業としてのプラモデルへの理解があり、このようなキャリア教育が推進しやすい環境が整っています。
大人向けには「ものづくりプラモデル大学」を実施
「ものづくりプラモデル大学」(写真)とは、行政や模型業界と一緒に「プラモデルの魅力を伝えその機運を盛り上げていける人財」を育てる学び舎です。
まずは模型産業の理解から。その後プラモデルやものづくりの魅力を知り発信する方法を習得します。
実際に手を動かして作ったり、写真の撮り方や取材の仕方なども学んだりできる実践的なカリキュラムです。
2022年の修了生の中には、すでにビジネスを起こした方や、小学生を対象に工作体験教室を始めるという方も出ているとのこと。
プラモデルのまちづくりを一緒に後押ししてくれる人財が育ち、大学での学びが結実しています。
市民や企業からの声が10倍に!模型の世界首都へ着実に前進
(写真は、静岡市の模型の歴史やメーカーラインナップ、ホビーイベントについての冊子)
プラモデル化計画発足から3年が経過し、「こんなものをプラモニュメントにできたらいい」など市民や企業からより多くの声が届くようになったとのこと。
以前は年数件だったものが、今では数十件とぐんぐん関心が高まっています。
プラモデルに関心を持ち、それを伝えたい、形にしたいといった人の輪がどんどん広がっている、そんな手ごたえを感じているという石川さん。
いただいた声に耳を傾け具現化していくとともに、プラモデル産業の振興、ものづくりの振興がさらに発展していけばと構想は広がります。
最後に、静岡市への移住や転職を考えている方へ石川さんから一言。「そもそもものづくりが盛んな地域であることに加え、官民一体となって産業を盛り上げている静岡市には、仕事として携われる活躍の場がたくさんあります。ぜひ、一緒に静岡市のものづくり産業を盛り上げていきましょう。」
静岡市出身の方はもちろんまだ足を運んだことがないという方も、プラモニュメントをはじめ、プラモデルを体感しに訪れてみませんか。
2023年5月末取材/2023年6月27日公開
<執筆> いいとこ静岡編集部